Arata Isozaki, Cities in the Air
photo: Takashi Ohtaka

建築と都市に関する巡回展のテーマとして、今から60年前の1960年代に盛り上がりを見せた建築家からの都市への提案を取り上げます。丹下健三による「東京計画 1960」、菊竹清訓、黒川紀章、大高正人、槇文彦、川添登らによる「メタボリズム」の提案、そして磯崎新による「空中都市」、これらは都市化が引き起こすさまざまな問題に応えようとする野心的な提案でした。これらの計画は都市の拡張という意味で一見似ており、またごく短期間 に比較的近い関係にあった建築家たちによって構想されましたが、その内実はずいぶん異なります。この偏差の中に都市へと向かう困難を見ることが出来るでしょう。
これらの提案はその野心的な提案から特異な例として理解されがちですが、しかし世界中 で同じような姿の建築が建ち並ぶ近代建築の時代から一歩踏み出し乗り越えようとする新 しい都市像の模索のひとつと考えられます。これほどラディカルな提案は珍しいとはいえ、 平行する計画は同時代的に世界各地で見られます。近代化に伴う都市膨張を世界史的観点 から見る視野のもとで、これらの提案は様々な国で共有されうる問題意識への回答に他な りません。
こうした都市問題は過去のものではなく、むしろ現在切実さを増しています。国連の推計 では 2010 年に世界人口のうち都市に居住する人口が 50%を超えるとされ、史上例を 見ない急速な都市化への対応はまさに現在の問題です。現代都市を具体的に捉えるこうし た視野において、こうした課題に比較的早く行き当たった東京と、その問題を真正面から 受け止めた提案をあらためて見ることで、グローバルな問題としての都市の課題・困難が 見えてくるでしょう。                  
日埜 直彦


 
本展は、1960年代に日本で盛り上がりを見せた都市への実験的な提案を入口に、現代に至るまでの都市を取り巻くさまざまな状況や、現在の東京に見られる特異性を、建築や都市の模型のみならず、アニメーションや写真スライド、映像といった多様なメディアを交えながら検証する。
中国、アメリカ合衆国、カナダ、ニュージーランド、タイ、フランスなど、世界各地を巡回し、今回、国際交流基金とマドリード工科大学工学・工業デザイン学部の協力の下、スペインでの開催が実現した。 
 
オープニングセレモニーは1月15日午前9時より行われ、日本国際交流基金マドリード日本文化センター吉田昌志所長、マドリード工科大学Guillermo Cisneros Pérez学長、工学・工業デザイン学部のEmilio Gómez García学部長が各機関の代表として参加を予定している。
 
会期:2020年1月15日(水)~2月14日(金) 月~金の8:00~21:30
会場:Escuela Superior de Ingeniería y Diseño Industrial de la Universidad Politécnica de Madrid (Ronda de Valencia, 3. Madrid) 
入場無料

 
本展示に関連して、ジン・タイラ氏による講演会:[re] JAPÓN. ARQUITECTURA COMO CIUDAD DE POSGUERRAを以下の通り開催します。
 
1945年、第二次世界大戦の敗北後、日本は肉身的にも精神的にも大きな打撃を受けた。広島と長崎への原爆投下、昭和天皇の「人間宣言」、連合国軍による統治、1946年の新たな日本国憲法の公布などの様々な出来事が、日本を絶対君主制・軍国主義国からアメリカ合衆国同盟国の自由民主制国家へと変えていった。60年、70年代の研究と技術の進歩により、日本は今までにない経済発展を遂げた。しかしそれと同時に、人口過多・環境汚染、交通渋滞、緑地不足など住環境問題に直面していた。この状況に対し、日本のメタボリストたちは様々なアーバンデザイン建築プロジェクトを提案し、国家による緊急解決策の模索へと導いた。
 
講師:ジン・タイラ
建築博士。ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学(ULPGC)で教鞭を執る。ULPGC関連機関TIDESの研究グループURSCAPESの一員である。ナバラ大学建築学部を卒業、研究員、修士課程、博士課程(日本政府文部科学省の奨学金を受給)を経て、1996年から2004年まで東京大学での博士研究員(日本学術振興会の奨学金を受給)を務める。コロンビア大学(ニューヨーク、アメリカ)、同済大学(上海、中国)など、日本、スペイン、アメリカ合衆国等各国の大学で教師としての経験を積む一方で、原広司、磯崎新、伊東豊雄など、様々な日本人建築家の下でも働く。現在は、MPC建築家グループのアソシエイトメンバーとして、自身の業務に取り組んでいる。
国内外の様々な雑誌に記事を投稿しており、中でも自身の著書[re]TOKIO は国際交流基金(2011)及びサントリー財団(2017)より表彰を受けた。
彼の作品は、SDreview (日本)、第10回ヴェネチア建築ビエンナーレ (イタリア)、 第9回イベロアメリカ建築・都市計画ビエンナーレ及び第13回スペイン建築・都市計画ビエンナーレなど、数々の国内及び国際的コンクールや展示などで評価されている。
 
日時:2020年1月29日(水)19時~
会場:Sala Roja. Escuela Superior de Ingeniería y Diseño Industrial de la Universidad Politécnica de Madrid (Ronda de Valencia, 3. Madrid) 
入場無料。定員になり次第、入場を締め切らせていただきます。

 

         主催:                                                 協力                                                                                                後援                                                                 関連プログラム: