食品サンプル(舟盛)、2017年

日本では古来より、絵画や彫刻(美術)と陶磁器(工芸)との間に階層や制度的垣根が存在していたわけではなく、両者ともに時代に寄り添う形で共存し、優れた作品を後世に伝えてきました。現代においても美術と工芸は等しく芸術として認識される一方、近年は芸術(ハイ・アート)とサブ・カルチャー(大衆芸術/ロー・アート)との間の境目も曖昧としたものとなり、ハイブリッドな文化が世界の着目を集めてやみません。
 この展覧会は、並外れた手法や技術を意味する「超絶技巧」という名称を冠するに相応しい作品を、幅広いジャンルから横断的に集めて一堂に展示するものです。当時の最新技術を用いた作品によって海外を驚かせた明治期の工芸を出発点として、そのエッセンスを受け継ぐ今日の超絶技巧作品の数々を展示します。巧みな表現、細部に至るまでの完成度の高さに重きをおく作品の展示を通して、個々の作品の驚嘆すべきテクニックや、それさえも凌駕する表現世界を紹介するとともに、職人気質を尊び、制作過程に徹底的にこだわってきた日本の創作文化の一端を明らかにしようとする試みです。
 
開催概要

参加作家・出展物:
荒木智(ジオラマ)、岩崎貴宏(インスタレーション)、梅田宏明(パフォーマンス映像)、北村武資(工芸・織物)、鈴木康広(インスタレーション)、須田悦弘(木彫)、西脇直毅(絵画)、深堀隆介(立体)、本城直季(写真)、三島喜美代(立体造形)、山口晃(絵画)、山本一洋(陶器)、明治工芸(七宝、薩摩、蒔絵、自在、刺繍)、食品サンプル、フィギュア
会期:
サラマンカ:  2018年9月20日(木)から10月19日(金)まで
ソリア:  2018年11月12日(月)から12月12日(水)まで

会場:
サラマンカ: サラマンカ大学日西センター (Plaza San Boal 11-13, 37002 Salamanca)
ソリア: Palacio de la Audiencia 展示ルーム (Plaza Mayor, 42001 Soria)

主催: 国際交流基金、サラマンカ大学日西センター、ソリア・インターナショナル・フィルム・フェスティバル
監修: 山下裕二(明治学院大学教授)


国際交流基金海外巡回展とは
国際交流基金では、日本の美術や文化を海外へ紹介する活動の一環として、海外に巡回する巡回展事業を継続的に行っています。巡回展は、陶芸・工芸・日本人形など日本の伝統美を紹介する展覧会から、現代美術・写真・建築・デザインなど現代の日本を伝える展覧会まで多岐にわたっており、約20の展覧会が常時巡回に供され、年間100以上の美術館、文化機関などで開催されています。これらの巡回展は、日本の在外公館及び国際交流基金海外事務所が各地の美術館、文化機関とともに共催事業として実施しています。